園長だより 11月号

親ん似た亀ん子!~小児科医が見た親子の在り方~

 紅葉の便りも届き、秋の深まりを感じる季節になりました。ただ、本格的な寒さの到来を前にツインデミック(新型コロナとインフルエンザの同時流行)の懸念もあり、気の休まる時がありません。ただ、子どもたちの明るい笑顔(時には泣き顔)とパワフルな動きに癒やされている毎日です。

 去る10月23日(金)の19時から、中央公民館において「鹿児島市あいご会発足60周年記念講演会」で「次代を担うのは、目の前にいる子どもたち」というテーマで話をする機会をいただきました。新型コロナウイルス感染症の関係でほとんどの講演はお断りしていたのですが、今回は一年半以上前からの依頼ということもあり、半年ほど遅れての、しかもソーシャルジスタンスを保ち、規模を縮小しての開催でしたが、杉元羊一鹿児島市教育長(森市長代理)や川越桂路市議会議長をはじめ100名近くの方々に参加をいただき、温かい雰囲気の中で、大人の在り方、とりわけ親の在り方のついて、自己反省を交えながら話をさせていただきました。自らの子育てを振り返ると、今更ながら冷や汗の出る思いで話をさせていただきました。

 高校の大先輩に、元鹿児島県小児科医師会長の鮫島信一氏がいます。天文館で開院しておられますのでご存知の方も多いのではないかと思います。医師としての活躍はもちろんのことですが、いつも豊かな人生を歩いておられるなあと感心させられる先輩でもあります。また、先輩は、知る人ぞ知る「薩摩狂句の達人」でもあります。過日出版された、「薩摩狂句の味『笑ったもんせ』」(第2集)をご送付いただいたことがあります。著書を出版されるたびに送付していただいているのですが、先日改めて読ませていただきました。いずれの句も、その時々の世相を反映しており,笑いあり、共感あり、感動ありの連続でした。

 その中に、「小児科医として見る親子の在り方や子育ての様子」を詠んだ句が幾つかありました。「良か児<コ>じゃち 見れば見本の 親が良し」とか「宝児<タカラゴ>ん 甘えん癖<グセ>は 後<ノ>ちゃ苦労<クロ>い」などです。小児科医から見た、親の在り方や子育てのヒントが内包されており、自らの子育てを振り返りドキッとさせられます。笑いの中にも、風刺の効いた句があり、示唆に富んでいます。診察室での様子が目に浮かぶような気がします。先輩のお人柄にもよるとは思いますが、鹿児島弁だからこその温かみがあり、何か胸にストンと落ちてくるものを感じます。

 本県には、「親ん似た亀ん子」などの教育伝承等も数多く残されています子育ての原点は、家庭であり、親子関係であるということにも気づかされます。ただ、子育ては、 家庭のみで達成することはできません。様々な方々や環境等との関わりの中で子どもたちは伸びやかに成長していきます。保育園やこども園・幼稚園等もその一翼を担っています。そこでは集団で生活しますので、自分の思い通りになるという訳にはいかないことも多々あります。しかし、自分の思いだけでは事が進まないということの経験が、人間としての成長を促してくれることも事実です。保育園等での経験が、「社会性」を身に付けるための貴重な経験として役立つことができればと念じながら取組を進めています。

 どんなに時代が変わっても、親子の関係や家庭の役割が変わることはありません。目の前にいる子どもたちの成長を期待し、励まし続けていける存在として、私たち大人(親や保育者等)も、子どもたちに負けないように、学び続けていく必要がありそうです。子どもたちは,私たち大人の言動をちゃんと見ているからです。