園長だより 令和5年12月号

本当の強さとは!
~心優しきヒーロー「アンパンマン」~

 今年も年末を迎え、様々なことを振り返っています。子どもたちの著しい成長ぶりや尽きることのないエネルギッシュな姿を見ていると、子どもたちにとって穏やかで、明るい未来が来るように願わずにはおられません。一方、紛争に明け暮れている世界の状況に目を向けると、人間の醜さや愚かさを感じずにはおられません。せめて来年こそは、人々が安心して暮らせる年になるように祈るしかありません。

 さて、子どもたちはもちろん、大人にも人気があり、夢と勇気を与え続けていた漫画家の「やなせたかし」氏は、平成25年10月13日午前3時8分に、94歳で亡くなられた。「アンパンマン」の作者として有名なやなせたかしさんは、放送作家や作詞家としても著名であり、童謡「手のひらを太陽に」などは、今でも多くの人々に親しまれ、歌い継がれています。その影響力の大きさには、ただただ感嘆するばかりです。何といっても、今でも子どもたちに絶大なる人気があるのは、心優しきヒーロー「アンパンマン」です。以前、東日本大震災の被災地を「アンパンマン」とともに訪れ、被災地の方々から感謝されたという話を聞きました。当時仙台市の小学校1年生だった男の子は、大震災のとき、暖をとるために一夜を過ごした車のラジオから「アンパンマンのマーチ」が流れ、元気づけられたと振り返っています。子どもたちにとって、「アンパンマン」は、身近であるだでなく、まさしく心優しいヒーローだったんだと、改めて実感させられたエピソードでした。

 保育園の子どもたちは、今でもアンパンマンが大好きです。なぜ今でも子どもたちに人気があるのでしょうか。「横浜アンパンマンこどもミュージアム」の山口弘子館長さんは、「アンパンマンは、顔を困っている人に食べさせる優しさで、弱さも強さに変えてしまうキャラクターだ。」と、言っています。こここに、多くの人に愛され、世代を超えて親しまれてきている理由があるような気がします。混沌としたこんな時代だからこそ、子どもたちには、「アンパンマン」を通して、本当の優しさとは何かとか、世界の平和とか、本当の強さとは等を伝え続けてきたいと考えています。聞いた話では、再来年からの連続テレビ小説は、やなせたかし夫妻を題材にした「アンパン」になると聞きました。何となく分かるような気がします。

 オリンピック金メダリストで、元WBA世界ミドル級スーパー王者のプロボクサー村田諒太さんがある番組で、オリンピック金メダリストになり、世界チャンピオンになって、いろいろな方から「本当に強いですねと言われる度に、自分の弱さに気づき悩んだ。」と言っていました。彼は、最近ある番組で、「今頃になって気付くなんて遅いんですが、父親の優しさが一番強かったということに気づかされました。」という趣旨の話をしていました。「優しさはすべてに勝つ」という言葉を思い出しました。

 私は、目の前の子ども一人一人が「アンパンマン」そのものだと考えています。子どもたち一人一人の心の中に「アンパンマン」がいると考えています。様々な個性を持った子どもたちがいます。だから、当然小さなトラブルも起こります。しかし、子どもたちは、「アンパンマン」のように、友だちや大人などの周りの人たちの力も借りながら、自分の力をフルに発揮しつつ解決していく力も持ち合わせています。まさしく、どの子も、みんな「小さなヒーロー・ヒロイン」なのです。私は、子どもたちに内在する力と、これから先のの可能性を信じたいと考えています。

園 長  中 村 洋 志