園長だより 令和4年9月号

親の背中を見せるためには! ~子どもをそっと後ろから見守ること~

 猛暑と新型コロナウイルス感染症の再拡大により子どもたちだけでなく、大人にとっても厳しい夏になりました。思いっ切り園外で遊べなかったり、大きな声で歌ったり出来なかったりする状況を見ていると申し訳ない気持ちになりますが、そんな中でも子どもたちは「今」という時間を、工夫しながら精一杯生きています。いつものことながら子どもたちのエネルギッシュな姿に感心するとともに、圧倒されてしまいます。

 さて、昔から、「親の背中を見せることが、親の最大の仕事だ」と、よく聞かされてきました。特に、幼児期の子どもたちは、身近にいる親や保育者など、周りの大人たちの言動をよく見て真似ることから学んでいます。「子どもたちは、親や保育士等の言う通りではなく、する通りにする存在である」と言われる所以です。実は、お腹の中にいる時から様々な影響を受けていることは医学や心理学の専門家等から指摘されていることでもあります。幼い頃からの一つ一つの体験の積み重ねが、その後の人生に大きな影響を与えるということを、これまでの自らの拙い経験からも強く感じています。私は、「背中を見せる」ためには、子どもと「真正面から向き合い、自分の思いを伝えることが大切だ」と考えています。「背中を見せる」ということは、子どもに「親自身の生き方=生き様」を見せるということだからです。

 親や保育者自身が「自分らしい前向きな生き方」をしていれば、子どもたちは、自然にその影響を受け、感化されていきます。そして、それは子どもたちの中に定着し、子どもたちの指標となっていくのだと思います。だから、親や保育者がイキイキと子どもに接していれば、子どもたちも自然にイキイキとなるのは当然です。もちろん、親や保育者の言動が、反面教師としての役割を果たすことがないわけでもありませんが、親や保育者等の姿勢や考え方が、子どもたちの成長には計り知れない影響を与えていることは紛れもない事実です。子どもたちはちゃんと見ていますし、その感覚は大人以上に鋭いような気さえします。

 以前、女優の竹下景子さんがある講演会で、「親は、子どもの前を歩くのではなく、後ろから見守っていくのが務めではないのか」という趣旨の話をされています。むしろ、「子どもの背中を見る」ことの重要性を語っておられますが、このことは、「親の背中を見せる」ことと、矛盾するものではありません。子どもに、一人の人間として、真正面から向き合い、温かく見守っていくことの大切さを語っているのだと思います。

 なかなか新型コロナウイルス感染症の影響から脱却出来ない状況が続いていますが、一日も早く収束し、子どもたちが思いっ切り活動出来る日が訪れることをを願うばかりです。やがて、暑かった夏も過ぎ、実りの秋へと向かっていきます。保育園としましては、保護者の方々との更なる連携を図るとともに、子どもから目を離さず、「子どもの後ろから、そっと見守っていくこと」を大切にしながら、一人一人に寄り添う取組を充実させてまいりたいと考えております。

園 長  中 村 洋 志