園長だより 令和3年11月号

風は何色? ~子どもたちの内側にある感性を大切に~

 いつの間にか周りの山々もすっかり秋の装いになり、過ごしやすい季節になりました。子どもたちは、以前よりも公園等に行く機会が増え、心なしか元気に過ごしているように感じます。ある日の保護者からの連絡欄に、「今日も元気です。出勤する私に『頑張って』と声をかけてくれました。昨日は、誕生日プレゼントの三輪車に乗り散歩をしたのですが、見るもの、色、すべてに反応して私に教えてくれました。おしゃべりがさらに楽しいみたいです。本日もよろしくお願いします。」というお便りがあり、微笑ましい光景が目に浮かび、ほっこりしました。子どもたちは、どの子もその内側に豊かな感性を持ち合わせています。

 このお便りを読んで、かなり以前、生まれつき目の見えない子どもさんをお持ちのご両親から聞いた話を思い出しました。、それは次のような内容でしたが、びっくりするとともに、深く感動したのを鮮明に覚えています。お子さんが4~5歳の頃、買い物に行き車に乗せて帰る途中、唐突に「お母さん、風は何色?」という質問を受けたということです。車の中から手を出し、手に当たる風の感触を感じながら発したこの言葉ですが、「何という感性だろう。」と感心するとともに、何となく生きている自分への問い返しのように感じました。

 聞いたお話では、このご両親は、例え目が不自由でも普通の子として育てたいという考えから、スーパーで買い物をした後などには、「これは赤いリンゴ」とか「これは同じ形だけど黄色いリンゴ」とか、「これはオレンジ色のミカン」とか「緑色のキャベツ」とか、何回も手に触らせながら教えたと言います。また、動物などにもできるだけ直接触れさせ、言葉で説明し、繰り返し教えたと言います。その結果、不思議なことに、ある程度手で形だけでなく、色も感じ取れるようになったという話を伺い、結局はご両親自身が豊かな発想を持ち、お子様の可能性を信じ、諦めずに育ててこられたその努力に気づかされ、感動したことを覚えています。

 しかし、このご両親でさえ、「風は何色?」という質問は紅葉のイラスト「家族でピクニック」予想外だったとのことです。当たり前のように感じ、風には色はないと決め込んでいる私たち大人の概念を崩すような問いでもあります。子どもたちの内側にある感性の豊かさに驚かされます。目の前の子どもたち一人一人の可能性と成長に期待せずにはおられません。

 自分の子どもだけを見ていると、なかなかそのよさに気付かないことがありますが、子どもたちは心身共に確実に成長しています。ただ、子どもたちがどのように成長していくかは誰にも予測できませんし、誰にもその子の成長の上限を決めることはできません。私も多くの子どもたちと出会ってきましたが、たまに会う彼らの成長ぶりに驚かされることがよくあります。そして彼らの活躍ぶりに教えられ、励まされることも度々あり、頼もしく感じています。子どもたちは、やがて私たち大人を超えて成長していく存在です。子どもたちの内側にある豊かな感性・可能性に期待しながら、見守っていこうではありませんか。

園 長  中 村 洋 志