園長だより 令和3年2月号

「守破離」の精神!~しっかり抱いて、下に下ろして、歩かせる~

 あっという間に一月が過ぎ、2月を迎えましたが、新型コロナウイルス感染症にとっては、暦は関係ないようです。一人一人の行動が一番の感染対策に繋がると信じています。子どもたちの命はもちろん、すべての年齢層の命を守るためにも、まずは私たち大人一人一人の自覚ある行動に期待したいと思います。

 いつの時代も、子育てをすることは、簡単なことではなかったようです。以前から、数々の子育てに関する書物等も出ていますが、一つだけの正解というものはありません。しかし、だからこそ、楽しみもあるのだと思います。最近改めて、「しっかり抱いて、下におろして、歩かせる」という格言を耳にすることがあります。「しっかり抱いて」とは、親に甘えて依存するという、親子の「愛着」形成の重要性を表しています。(特に、3歳頃まで)「愛着」の次に必要なのは、「下におろして、歩かせる」,ということです。つまり、愛着からの「分離」です。信頼できる大人(多くは親)に守られた、温かく・安定した結びつきの場所から出て、やがては、自分の力で歩いていかなければなりません。そういう過程を通して、「自立」していくのです。

 この考えは、「茶華道」や「武道」などの日本伝統の諸道でいわれる「守破離」の精神からきていると言われています。これは、武田流の基本教科書(江戸時代)として重んじられてきたと言われていますが、千利休が、茶道の心得として託した百首の和歌からなる「利休道歌」の中でうたったことから有名になりました。

 この「守破離」は、3つの段階に分けられます。赤ちゃんに離乳食を食べさせているお母さんのイラスト
「守」・・・・最初の段階であり、親や師の教えを忠実に守ります。親や師の行動を見習って、自分のものにする努力をしていく段階です。
「破」・・・・自分独自の方法を試み、型を破っていく段階で、次第に自分
流を身に付けていきます。
「離」・・・・最後の段階で、親や師のもとから離れて、自分自身で学んだ内容を発展させていきます。
もちろん、「離」の後も、教えを受けた親や師に対する礼や、自分をつくってくれた「礎」を忘れてはならないとも教えています。

 私たちも職員も、保育園での学びは、「守」の段階であり、子育ての中でも、人としての基礎を育んでいく、一番肝心な役割を担っていると認識しています。子どもたちにとって、この時期での様々な経験が将来に繋がるということを自覚しながら、一人一人の子どもたちと真正面から向き合い、日々の取組を充実させていきたいと考えています。

 いずれは、どんなに可愛い子どもでも親や家族のもとを巣立っていきます。最終的には、私たち大人は独り立ちしていく子どもを側面的に援助することしかできません。一人の人間として「自立」し、自分の道を、自分らしく生きていく子どもたちを温かく、時には厳しく見守りながら、取組を進めることができればと願っています。

 本年度も、あと二か月となりました。やがて、それぞれの個性を生かしながら自らの道を歩いて行くことになると思います。これから様々な経験を通して、どんな大人として自立していくのか楽しみにしています。

園長 中村洋志