園長だより 10月号
「親近性」と「新奇性」! ~子どもは繰り返しを楽しんでいる~
子どもたちは、同じことを繰り返すことよって、物の取り扱い方を学んだり、物の性質を知ったりすると言われています。試行錯誤をしながら繰り返す中で、いろいろ工夫が生まれ、思考力を発達させていくからです。実は、この反復動作は、単なる機械的な繰り返しではありません。子どもたちにとっては、この単純そうに見える繰り返しが面白いし、そのことによって、物の性質等を実感していくのです。例えば、天文館てんてん保育園と騎射場れいわ保育園では、新聞紙等の紙を使って、それを破って遊んだり、粘土で自分の好きな動物などを作ったりして、楽しんでいる姿をよく見かけます。大人から見れば、毎日同じことをして、何が楽しいのかよく理解できないこともありますが、子どもたちにとっては、紙の大きさや硬さが異なることを感じたり、粘土特有の感触を楽しんだりしています。昨日と違う感覚が得られることに、大きな意味があるのです。
また、繰り返し同じ絵本を読むことも、読む度に、異なる問題意識で接し、異なる感想を持つのかもしれません。絵本やアニメ番組等の台詞を覚えるのも、自分の過去の記憶と合致していれば成功感を味わい、違っていれば、次は合致させようとして、懸命に覚えるのです。表面的には、同じ行動に見えても、子どもたちの内面は、同じことの繰り返しではないかもしれません。
最近の脳科学では、テレビのCMに代表されるように、同じ内容を繰り返すことによって親しみを増す「親近性」と、単純に同じことを繰り返すだけでは飽きられてしまうため、それを防ぐために、随時、適度な変化としての新しい要素を加えていく「新奇性」とが注目されていると聞いたことがあります。大人から見れば、飽きずに同じことを繰り返し、楽しむことができるのだろうと、不思議な気がすることがありますが、子どもたちにとっては、大きな意味があることがあるのです。
しかし、子どもたちは、すべての絵本やアニメ番組等を繰り返し見たがるのではありません。子どもの発達段階、知識、経験などにふさわしい、常に新鮮さを与えてくれる内容のものを繰り返し見るのです。このようなことを考えながら、子どもたちの様子を見ていると、一つ一つの行動や活動が愛おしくて、面白くてたまりません。だから、子どもたちの笑顔は、いつも眩しいほど輝いているし、毎日見ていても飽きがくることはないのです。私たちも、子どもたちの旺盛な好奇心に負けないように、保育方法や内容等の工夫をしていく必要があると考えています。
園長 中村洋志