園長だより令和8年9月号【全体を見ることの大切さ!】

全体を見ることの大切さ!
~「ウサギとカメの話」に学ぶ~

  まだまだ残暑の厳しい季節ですが、子どもたちはそれぞれの個性を生かしながら相変わらず精力的に活動しています。目の前の一人一人は、似ているようでもよく見ると異なる個性を発揮しながら、保育園という小さな社会の中で過ごしています。時には、その個性がぶつかり合う場面もありますが、私たちは怪我をするような危ない場面とかは別として、あまりにも過剰な介入になり過ぎないように気配りしながら、そのようなことも一つの経験としてなっていくのだろうなと思いながら見守っています。


ふと、小学校での道徳の時間に習った「ウサギとカメの話」を思い出しました。皆さんは、この話には続きがあることをご存知でしょうか。これは、もともと中国から伝わってきた話ですが、我が国ではこの逸話の最初の部分だけが伝わり、主に道徳の教材として使われたため、続きの話は知らない方が多いのではないでしょうか。実は、4つの話で構成されているのだと聞いたことがあります。1回目:走りに自信のあるウサギが途中で油断し居眠りしたため、休まずコツコツ頑張ったウサギの勝ち。2回目;負けたウサギが再挑戦し、当然足の速いウサギの勝ち。3回目:今度はカメが川のあるコースでの競走を提案したため、ウサギは渡れないのでカメの勝ち。4回目;再度川のあるコースで競走し、両者同着。なぜなら、川まではウサギがカメを背中に乗せて走り、川はカメがウサギを乗せて泳ぎ、ゴールまでは再びウサギがカメを背中に乗せて走り、同時にゴールしたという話です。中国では、4回目まをセットで教えていると聞いたことがあります。


我が国では、油断せずにコツコツ頑張れば、最後はいい結果に繋がるから諦めずに努力を続けなさいという教えを子どもにも伝える教材として活用してきました。それはそれで意味のあることですが、この逸話が語り継がれてきている背景には、「人はそれぞれ異なる個性や特性を持っている。その集合体が社会である。それぞれの違いを認め、それぞれのよさに気づき、各人の特性を生かすことで、もっといい世の中が築けるのではないか。」というメッセージが内包されているからであるようにも思えます。ただ、現実に目を転じると、中国及び日本をはじめ世界の国々がそのような方向に進んでいるかどうかについてはいささか自信はありませんが・・・。


先日、私の現役最後の教え子たちが同窓会を開催してくれました。当時から豊かな個性の持ち主だった彼らは折々に集まってくれるのですが、今年は50歳の節目ということで盛り上がりました。現在彼らは、医師、会社経営者、客室乗務員、教員(新任教頭)、自営業、会社員、専業主等、ぞれぞれの立場で頑張っていますが、話題はすぐに出会った頃に戻り、当時の頃のたわいもない思い出話であっという間に時間が過ぎていきました。全く異なる個性の集まりですが、男女を問わず肩を組み合い、立場を超えて笑い合っている姿に接することができる喜びは何にも代え難い宝です。まさに教師冥利に尽きる瞬間でもあります。世の中の中堅として頑張っている彼らも「この年になってこんなに集まって、何でも語り合えるなんて嬉しい。」と口々に言いながら、近いうちの再会を誓い合うことでした。


今目に前にいる子どもたちも、やがて様々な個性の集まりで構成される社会の中で生きていくことになります。彼らの生きていく世の中が、自分らしさを発揮しながら生き生きと暮らしていける、そんな時代になることを願っています。

園長 中村 洋志